皆さんの今のお住まいは、持ち家ですか? それとも賃貸住宅ですか?
人ぞれぞれに考えがあり、経済事情によっても異なりますが、この問題はいつの時代でも悩ましい永遠のテーマであり、ファイナンシャル・プランナーの中でも意見が分かれるところです。

購入派からすれば「家賃を払うなんてもったいないから、家賃分で住宅ローンを組んで持ち家にした方が良いよ」と言いますし、
賃貸派からすれば「一回買ってしまったら、そう簡単には引っ越せないのに、隣が怖い人だったらどうするの?」と言われます。
それぞれにもっともな意見であることは間違いありません。

結局、最後は自分で決断するしかないのですが、その判断材料を提供するのが、我々ファイナンシャル・プランナーの仕事と言えるでしょう。

住まい選びは「住みたい場所」を最優先に

まずは、住みたい場所を最優先に考えることをお勧めします。
通勤に便利、子育て環境が整っている、実家に近い等々、理由は人ぞれぞれにあると思いますが、生活の拠点として「どこを選ぶか」、これを何よりも先に考えることが、一番大切だと思います。

たとえば都心の一等地、銀座に住みたいと思ったら、次に「いくら払えるか」、つまり予算との相談です。
いま払っている家賃を基準として、購入するか、賃貸するかを考えてみましょう。
さすがに、限りある予算の中で銀座に一軒家を持つのは無理がありますが、分譲マンションであれば築年数の古い物なら沢山ありますし、賃貸であれば、広さによっては5万円台から見つけることが可能です。

これから生活をする拠点として、通勤や通学、公園や施設などの生活環境など、全てにおいて「場所」が重要なポイントとなりますので、まずは住みたい場所を最優先に検討することをお勧めします。

住み替えの自由度で考える

家の購入には、たいていの方が住宅ローンを使って購入されると思いますので、簡単には引っ越すことができませんよね。
これに対して賃貸住宅は、敷金や礼金などの諸費用は若干かかるものの、購入に比べて住み替えの自由度は高いと言えます。

憧れの街に住んではみたものの
・生活に便利な繁華街が良いと思って住んでみたら、夜うるさくて眠れない
・街は気に入っているけれど、朝の通勤地獄が耐えられない
・のんびり生活を夢見た移住なのに、地元の人たちに馴染めない
・憧れの田舎暮らしのはずが、虫との闘いで気が休まらず疲れ果てた
などなど、憧れと現実のギャップに悩んで、「住み替えをしたい」と相談に来られるお客様も多くいらっしゃいます。

また、コロナ過や病気等による収入の激変や急な転勤など、生活環境の変化にも比較的適応しやすいのは、家賃を選ぶことができる賃貸住宅であることも有利な点と言えるでしょう。
もちろん賃貸住宅は、どんなに長く住んでも、いくら家賃を払っても、自分のものになることはありませんので、そこは割り切って考えるしかありませんが。

最近はフリーレント物件や敷金・礼金、仲介手数料をサービスしている物件も増えてきましたので、初期費用を抑えつつ実際に住んでみることもできるようになりました。
家の購入は安い買物ではありませんので、初めて住む街であればなおさらのこと、ぜひ「試しに住んでみる」ということも選択肢の一つとして考えてみましょう。

生涯の「住宅コスト」で比べてみよう

購入と賃貸を比較する手法として、相談に来られるお客様にご案内している「住宅ストで比較する」方法をご紹介します。
たとえば、男性35歳(年収400万円、奥様と子供2人)の方が2023年1月に東京都内にある築5年の中古マンション4276万円(60㎡)を、頭金0円で諸費用も含めフルローン*135年払いで購入し、平均寿命81歳を迎えた場合を想定してみましょう。
*1:通常では諸費用や手付金は現金払いが一般的ですが、ここでは賃貸との比較の便宜上、全額ローンで計算しています。

  • 物件価格:4276万円(公益財団東日本不動産流通機構2023年1月23日発表資料より)
  • 諸費用額:215万円(物件価格の5%を想定)
  • 頭  金:なし(諸費用も含めてフルローンで購入)
  • 借入金額:4491万円
  • 総支払額:5775万円(金利1.5%/保証料込、35年、元利均等方式)
  • 月返済額:137,507円
  • 管理費等:828万円(1.5万円/月)
  • 税  金:460万円(固定資産税等:10万円/年)
  • リフォーム:1080万円(540万円x2回)
  • 火災保険:46万円(1万円/年)
  • 住宅ローン控除:▲69万円(10年間の合計金額)

この試算の場合、住居に掛かる生涯支払総額は8120万円(築50年超の中古マンションなので資産価値は実質0円で計算しています)となります。
これを賃貸住宅の家賃(敷金1ヶ月・礼金1ヶ月・更新料1ヶ月/2年で合計577ヶ月)で換算した場合、月額で140,728円となりますので、家賃が14万円以下であれば、賃貸マンションを借りた方がお得ということになります。

また、住宅ローン金利が1%上昇すれば、毎月の支払額は2万3千円増加しますので、さらに賃貸マンションの方が有利となる計算です。

もちろん、一戸建てであったり、一等地などの立地条件に優れるマンションであれば、資産価値が残る場合もあるので一概には言えませんが、事例の平均的な都内の中古マンションの支払総額で見た場合、賃貸であれば同じ支払金額で新築のマンションに入居ができたり、より駅に近いマンションに入居できるといったメリットも考えられるでしょう。

半面、賃貸住宅はどんなに払い続けても自分のものにはならず、家賃の急激な値上がりなどのリスクが伴いますし、高齢の方の場合には物件探しに苦労するかもしれません。

また、購入の場合、分譲マンションは一般的な賃貸専用マンションに比べ設備面で充実していることが多く、防音などにもお金が掛かっているため、住まいとしてのグレードや快適度は分譲マンションが勝る場合が多いです。

そういう面では、家賃やタイミングさえ見合えば分譲タイプの賃貸マンションが良いかもしれませんね。

ライフ・プランニング

この賃貸VS購入の住宅問題は、捉える観点によってメリットとデメリットが大きく入れ替わってしまうため、自分の出したい答えにいつの間にか寄せて行ってしまう厄介な問題ともいえます。

もちろん、生活していく上で掛かる費用は住宅資金だけではなく、子供に係る教育資金や、もしもの時に備えた保険料、ご夫婦の老後資金など、さまざまな観点から総合的にバランスよく判断をしなければならないですし、無理に背伸びをすれば、いつかどこかで歪みが来てしまいます。

そのような状態に陥らないためにも、将来を見据えたライフ・プランニングをしっかりと行い、目標に向かって進捗を管理していくことが、とても重要な作業と言えるのではないでしょうか。

ONプランニングでは、ご希望を丁寧にお伺いしながら、相談者様の立場に立ってライフ・プランニングさせていただきますので、お悩みの方はぜひ、一度ご相談ください。初回のご相談は無料で承っておりますので、ご希望の方はこちらまで。